ミッドライフ・クライシス(中年の危機)とは
30代後半から、40代にかけて8割の人が体験する「ミッドライフクライシス(中年の危機)」。第二の思春期とか、または思秋期と呼ばれることもあります。
「自分はいったい何者なんだろう」というアイデンティティのゆらぎや、「自分はなんのためにここにいるのか」、「自分の人生はこれでよかったのだろうか」というような存在意義や自己肯定が揺らぐという、心理的な危機をさします。
※バブル経済崩壊後に社会人になった就職や経済的な危機を指す「アラフォー・クライシス」(テレビ番組NHK「クローズアップ現代+」で命名)とは、呼び方は似ていますが別物です。
ミッドライフクライシスに陥る3つの原因
ミッドライフクライシスに陥る原因は大きく分けると3つあります。
1つは、カラダの変化、つまりは美や若さの喪失体験です。
年齢を重ねて体力が低下する、更年期症状で自分の身体が思うようにいかなくなる、閉経が近づき出産のタイムリミットを感じる、もう若くはないし若い頃には戻れない、残された時間を突きつけられるといった、焦りの体験は多くの人が感じます。
2つ目は、家族など身近な環境の変化です。
生まれた時からずっと一緒にいた子どもが、ついに家を巣立っていくことは、大きなショックです。また、この時期、元気で若々しかった親が老いていく姿や、介護が必要になる様子を目の当たりにしたり、実際に介護が始まったり、死別を経験したり。そんな環境変化が起こりやすい時期でもあります。自分の老後や、「命は永遠に続くわけではない」という人生の終わりが視野に入ってくる時でもあります。
3つ目は、社会的な立場の変化です。
これまで、子育てや家事、家族のことを懸命に行い、自分にこれといったキャリアがないことに悩むかたもいるでしょう。一方では、仕事に時間を費やし過ぎたことを悔やむかたもいるかもしれません。「もっと自分の人生を生きればよかったのではないか」「子どもが小さい時にもっといろんなことができたのではないか」など。
ミッドライフクライシスが起こるときは、カラダ・家族・社会的にも変化が起こり、「人生には限りある」という事実を突きつけられる時でもあります。
ミッドライフクライシスからの脱出方法
①運動をすること
「健全なる精神は健全なる身体に宿る」とローマの詩人ユベナリスさんも言っていますが、手っ取り早く健全な身体を手に入れる方法は「運動」です。筋力は幾つになっても、回復させることができますし、体力がついて疲れにくくなったり、自分のカラダを自分の筋肉でコントロールできるという経験は、とても自信になるものです。
また、将来の健康寿命を伸ばすなど「今」の悩み以上の効果を運動はもたらしてくれます。
②自分のカラダの変化を知ること
女性の場合、同時期に「更年期」に差し掛かります。女性ホルモンの急低下によって起こる体の不調から「歳のせいかしら」「不調体質に変わってしまったのね…」と思うと、出口のないトンネルに入ったような気持ちになりますが、更年期には必ず終わりがあります。
自分の体を肯定的に知っていることは心の「余裕」につながります。
③自分自信を知ること・表現すること(アイデンティティの再構築)
自分は、どういう状態が心地よくて、何が好きで、何が幸せなのか、という「自分」を棚卸しして改めて知ること、「自分はどうしたいのか、自分はどうありたいのか」を考えること、そしてそれを表現することです。人間は、表現することで感受性が高まってきます。
世界平和のために生きたっていいし、朝の1杯のコーヒーのために生きたっていいのです。
ミッドライフクライシスは成長の機会
対処方法を考える中で、自分と向き合い、生活や生き方を見つめ直す機会になります。
実はミッドライフクライシスは、この先の人生をより豊かに生きるための、進化の時なのです。「いい歳して迷って恥ずかしい」なんてことはない、多くの人が通るごく自然な成長の過程なのです。
「自分の人生、このままでいいのだろうか」と立ち止まる心の裏には、「かけがえのない一度きりの自分の人生を大切に生きたい」と思いがあるのです。
8割の人が感じるミッドライフクライシスは、一度きりの自分の人生をよりよく生きるために与えられたチャンスかもしれません。
永田京子