【ご相談】自分に自信がもてません。仕事で昇進したのですが、私なんかが本当にここにいていいのだろうか、自分にふさわしいのだろうか、昇進は私が女性だったからではないか、などと考えて落ち込んでしまいます。自信を持って生きたいです。(40代 女性)
ご相談ありがとうございます。責任ある立場に立つと、そんなふうに心が揺れるのは、とても自然なことです。それは「自信がない人」だからではなく、「ちゃんと向き合おうとしている人」だからこそ湧いてくる感情だと思います。
また、女性が活躍の場を広げている一方で、「管理職に選ばれたのは、女性枠だからじゃないか」、「数合わせで選ばれただけで、実力ではないのでは?」と、自分の存在価値を疑ってしまうケースが少なくありません。
実は、このような心理状態のことを、「インポスター症候群」といいます。
「なぜか自信がもてない」、「もっとふさわしい人がいるはず」など、自分のことをまるで“実力のない偽物”のように思い込んでしまい、本当の力を発揮しづらくなってしまう状態です。インポスター症候群は、世界中でも7割もの人が経験すると言われています。
インポスター症候群とは
自分の成功や成果を「実力ではなく、たまたま運が良かっただけ」と感じてしまい、自分を過小評価してしまう心理状態のことをいいます。まじめで、努力家で、責任感が強い人ほど、「もっとできる人がいるはず」「自分はまだ足りない」「私なんて、まだまだ……」などと思いやすく、この症候群に陥りやすいと言われています。
なお、アメリカの心理学者クルーガー&ダニングが行った研究では、「能力の高い人ほど自分の能力を過小評価し、能力の低い人ほど自分の能力を過大評価する傾向がある」(Kruger & Dunning, 1999)と発表しています。
「私なんて、まだまだ……」と感じているのは、じつは誠実に努力を重ねてきた証拠なのかもしれません。
40代は心と体が揺れやすいとき
また、40代は仕事だけでなく、家事・育児・介護……と多方面での責任が重なる時期。更年期のホルモンバランスの変化によって、心身のコンディションも揺れやすくなります。そんな中で、「私なんて……」と感じてしまうのは、とても自然なこと。
でも、それに振り回されすぎてしまわないように、できることからセルフケアしてみましょう。
インポスター症候群5つの対策
① 乗り越えたことを「書き出す」
忙しい日々をおくっていると、これまで自分が積み重ねてきた努力とか成果は、意外と忘れてしまいがちです。一度、少し自分と向き合って、過去にやってきたことや・乗り越えたことを、リストアップしてみてください。紙に書いて目で見ることで、「私だって、こんなにがんばってきたじゃないか」と実感しやすくなりますよ。
② 比べるなら「他人」ではなく「昨日の自分」
周囲の誰かと比べると、どんなにがんばっても足りることはありません。
でも、本当はあなたの歩幅で、ちゃんと前に進んでいます。
1年前、3年前のあなたと比べたらどうですか? きっと成長しているはずです。
比べるなら、他人ではなく昨日の自分です。
③ ほめられたら「ありがとう」と言ってみる
周囲にほめられたときや賞賛されたときに、「たまたまだよ」「運が良かっただけ」と言いたくなるかもしれません。でも、それはぐっと飲み込んで、「ありがとう」と言ってみてください。自分の言葉は自分が一番聞いていますから、「わたし、がんばったんだな」と自分を素直に認められたら、少しずつ、自分を信頼する力が育っていきます。
④ 完璧を求めすぎない
一生懸命な人ほど、「ちゃんとやらなきゃ」「ミスしちゃダメ」と、つい完璧を求めてしまいがち。でも、考えてみてください。
完璧な人って、世の中にいますか?
たとえ100点じゃなくても、80点でも、60点でも、それで人を助けたり、信頼されたりすることはたくさんあります。もし失敗したとしても、「よし、ひとつ経験値がアップした」と思ってみてください。失敗の中にこそ、成長のヒントやすごいアイデアがつまっていることがあります。
⑤インポスター症候群を共有する
先述した通り、インポスター症候群の経験は7割の人があります。驚くほど多くの人が、似たような気持ちを抱えながら生きているということです。もし信頼できる人がいたら、思いきって「最近ちょっと自信なくてね」と話してみるのもいいでしょう。「えっ、わたしも同じ!」と返ってくるかもしれません。言葉にすることで、勇気がでてきたり、気持ちが軽くなることがあります。
インポスター症候群から抜け出すには、まずは自分を「低く見積もるクセ」に気づくことです。過小評価でもなく、過大評価でもなく、フラットな目で、自分の歩みを見てあげる。あなたが積み重ねてきた努力や経験は、まぐれじゃないし、偶然でもありません。
あなたがちゃんと、歩いてきたから、今のあなたがいるんです。
たまには、その成果や評価を、どうか素直に受け取ってみてくださいね。